江戸扇子と京扇子

photo1扇子の呼び方のひとつとして、「京扇子」や「江戸扇子」といった地名をつけた呼び名があります。もともと扇子は京都でできたものですので扇子といえば京扇子であり、江戸扇子などはその分派のひとつであると言えるのかもしれません。ただ江戸扇子も京扇子と同様に長年培ってきた伝統の技術で支えられているものであり、おのずと京扇子とは違った側面も養われてきました。

江戸扇子は京扇子に比べて、骨の数が比較的少なめです。もちろん京扇子にも骨の数が少ないものもあり、一概にそうとは言えませんが、江戸扇子で骨の数が多いものは江戸扇子らしからぬといえるでしょう。また江戸扇子はデザインがシンプルなのに対して京扇子は華やかです。例えるなら江戸扇子は「粋」で京扇子は「雅」といったところでしょうか。また、江戸扇子で絹扇というのもあまり聞いたことがありません。

というように細かい違いはありますが、なにしろ京扇子は多種多様なので、見た目ではっきりと区別するのは難しいのかもしれません。そのような外見の違いよりももっと大きな違いが江戸扇子と京扇子にはあります。それは製造工程の違いです。

京扇子は大半が分業制で、扇骨を作る人、要を打つ人、扇面を作る人、絵を付ける人、仕立てる人などその作業によって専門の職人がいて、それぞれが高度な技を持ち合わさって京扇子が出来上がっています。それに対して江戸扇子はその工程のほとんどを一人の職人がこなしています。今でこそ骨は高島、扇面は京都からというように外部に頼む場合もありますが、基本的には絵付け以外一人で出来ることが前提となっています。そのせいかどうかわかりませんが、江戸扇子の伝統を守る人は今では数えるほどしか残っていません。

江戸扇子も京扇子もそれぞれ良いところがあります。どちらも日本の伝統文化としてこれからも発展していってほしいと願っています。

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